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マクドから竜也と未悠が出たと同時、祐里と美緒がマクドに入ろうとしていたので互いに顔を見合わせ笑っている

「ゴメンね、駆け落ちしちゃってたよ」
未悠がそうおどけると同時、竜也が早くここから離れるぞと促したので祐里と美緒は不審顔
「何でさ。私らもポテトとか食べたいんだけど」
祐里が口を尖らせていると、竜也がそっと耳打ち

「恒星の坂本がいるぞ。それでもいいなら行けば?」
言われ、祐里は怯えたように何度も首を振った
竜也は美緒にも同じことを教えると、美緒はふふといういつもの笑みを浮かべている

「光ちゃんに教えられてたんだよね。坂本は最悪だって」

やがて4人は足早に当初の目的地へ向かうことに

「バッティンググローブがダメなら、走塁用のを買ってあげようかな。竜也、それでいい?」
美緒の提案。いや、別に走塁用のとかいらないよなと思いつつも、それを拒否できる空気ではない状況

西陵カラーの青はないかなーと美緒が探していたが、竜也が『高野連』の決まりで白か黒しか使えないんだよと告げるとつまらないなーと美緒は思わず地面を蹴る素振り

「さっきね、坂本とかいうやつに挑発されても竜也は受け流したんだよ」
未悠が祐里にこそっとそう耳打ちすると、祐里はあははと小さな声で笑みを漏らす

「そりゃそだよ。あいつはめんどくさい事には絶対関わらないから」
言いつつ、未悠の呼び方がいつもの“杉浦”じゃなく“竜也”に変わっていたことを疑問に思う
それとなく触れてみると、未悠もあははと笑って頷いてみせた

「ナンパされた時にさ、あいつ俺の彼女だからみたいなこと言ってさ。1回も呼んだことなかったのに、“未悠”とか呼んでカッコつけてたから。私もこれからそう呼んでやろうかと思って」
あっけらかんとそう言われ、祐里はいいじゃん、それと言って手袋を探して盛り上がっている竜也と美緒に向けて未悠お得意の銃ポーズをしてみせる

「まあキミは白より黒だよね」
美緒に揶揄されると、竜也は素直に頷いたのだが手に取ったのは白い方の手袋

「けどな、手袋だとこっちの方がなんかしっくりくるわ」
竜也が一人納得していると、美緒は小さく頷いた

「キミが使うやつだからね。キミが好きなほうを私は買ってあげるだけ」

会計を済ませ店を出る
手袋が入った袋を渡され、竜也は美緒にありがとうと大袈裟に頭を下げている
美緒はやめてと笑いながらそれを制していたのだが、そのやり取りを祐里は羨ましそうにそれを見つめている

「ありがとうって言い合える関係って、いいよね」
言われ未悠はキョトンとしていたが、祐里は構わずに続けている

「“ごめんなさい”で済ませるのって楽じゃん? けど“ありがとう”を突き通すのは大変だと思うんだよね。だから私は、ありがとうって素直に言えるのがとても羨ましいんだ」

ふーんという感じで聞いていた未悠だったが、やがてなんかいいねそれと頷いて祐里に改めて拳銃ポーズを伝授している

そこでちゃんとウィンクするんだよ? と言われ、祐里はあははと笑って「ありがと」と返している


その後、ご飯を食べて解散ということに

「リストバンドと手袋のお礼は...甲子園出場でチャラになりますか?」
竜也が茶化すと、美緒と未悠は互いに顔を見合わせやがて同時に首を振った

「ダメに決まってるじゃない」
美緒が容赦なくぶった切ると、未悠もそれに追随する

「甲子園出場は当たり前だよ。そうだね、満塁ホームランを打ったらそれでいいよ」
未悠の派手な無茶ぶりに対し、竜也は返品しますと真顔で答えたので祐里に頭を叩かれている

「ホントあんたって人は。そこは嘘でも、わかったって言えばカッコよく終わる話なのにさ」
祐里がそう嘆いていると、美緒が祐里の肩をポンと叩いて慰めている

「そんなことできたら竜也じゃないよ」
明らかにバカにされてるのに、竜也は胸を張ってそうだそうだと頷いている
それで未悠が、「褒められてないよ?」と即座にツッコミを入れるとまた真顔になっている

「せめて決勝タイムリーにして欲しかったよ」
嘆きつつ、肩を落とした感じで竜也がふらふらと歩き出す
慌てた感じで祐里が、「そっちじゃないって。ホント方向音痴なんだから」と追いかけたのを見て美緒と未悠はお互いに微笑みを浮かべていた



§


「楽しかったね。光と渚も来れてればよかったんだけど」
光と渚は、模試の兼ね合いで函館に戻っていた
2回戦は来れないから、絶対負けないでねとLineが送られて来ていて、竜也は「俺に言うなー」と猪木問答風味に返したところ即座にブロックされて祐里のスマホから謝罪する羽目になっていた

「あの時は助かりました。ホントありがとうございます」
竜也がまたわざとらしく頭を下げると、祐里はであるかと大仰に言った後あははと笑っている

「こちらこそ、今日誘ってくれてありがとね。楽しかったよ」
同じように祐里が頭を下げたので、今度は竜也がそれを制した

「ホント、私たちって何なんだろうね」
顔を上げ、祐里が思わずそう呟くと竜也もしみじみと頷いた

「わからん。けど相性はいいと思うけどな。サンマと大根おろし、アントニオ猪木とタイガー・ジェットシン、清水健太郎と覚醒剤。それくらいのレベルだろ」
また酷すぎる例えを言ったので、祐里はすかさず竜也の頭を叩くがすぐにあははと笑っている

「甲子園出場決まったら、私またバッティンググローブ買ってあげるね。もうボロボロでしょ」
言われ、竜也は即座に首を振った
え? という表情を浮かべた祐里に対し、竜也はいつもの見開きポーズを作ってしっかりと見据えた

「俺にはもっと欲しいものがあるから。その答えはもちろん...」
言ってニヤリと笑ってみせるが、祐里は「はいはい。どうせ祐里が欲しいとか言うんでしょ、知ってるよ」と軽く受け流す

「え、何でバレた?」
竜也が素で返すと、祐里はまたあははと笑った

「私とあんたは、藤波辰爾と長州力、和田と奈々、高樹沙耶と大麻くらい相性がいいからね。何言うかくらいすぐわかるよ」
予想以上の制御不能な回答が帰ってきたので、竜也は激しく噎せる羽目になっていた